先に結論
- サムネイルのフォントで効くのは、書体の雰囲気より太さです。 細い書体は、スマホの一覧に並んだ瞬間に消えます。
- 無料で商用利用できる極太ゴシックを3つ、同じ言葉で描いて比べました。インクの量は最大で1.25倍ちがいました。
- 太い書体には裏があります。小さくすると、画数の多い漢字から潰れます。一覧で14px(1280×720で50px)あたりが境目でした。
- 「太字」ボタンで太くしない。書体に太いウェイトが無いとき、道具は字を機械的に膨らませます。 測ると、インクが16.8%増えて輪郭が潰れていました。
なぜ「太さ」なのか
サムネイルは1280×720でつくりますが、視聴者が見るのはスマホの一覧に並んだ幅360pxほどの小さな絵です。 おおよそ3.6分の1に縮みます。 この縮小で最初に失われるのが、線の太さです。
以前、大きなプレビューで「読める」と判断した絵が、 一覧の大きさでは読めなくなる失敗を2回しました。 原因は文字の大きさではなく、細い書体の輪郭が背景に溶けたことでした (くわしくは「サムネイルがスマホで読めるかは、幅360pxで確かめる」)。
書体の雰囲気(丸い・角ばっている・手書き風)は、一覧の大きさではほとんど伝わりません。 伝わるのは「読めるか、読めないか」だけです。 だから、まず太さで絞ってから、残ったものの中で好みを選ぶ順番にしています。
無料で商用利用できる極太ゴシック3つ
サムネイルは収益化した動画に使うので、「無料」だけでは足りず、商用利用できる必要があります。 次の3つは、いずれもSIL Open Font Licenseで配布されていて、 商用の画像に使えます(サムネるの生成に使っているのもこの3つです)。
| 書体 | 性格 | 向いている場面 |
|---|---|---|
| Dela Gothic One | いちばん太い。かなが主役のディスプレイ書体 | ひらがな・カタカナが多い言葉。大きく1段で出すとき |
| M PLUS 1p Black | 太いが、漢字の懐(ふところ)が保たれる | 漢字が多い言葉。小さめの段 |
| Noto Sans JP Black | 3つの中ではいちばん細い。収録している漢字が多い | 珍しい漢字が混ざるとき。他の2つに無い字の受け皿 |
3つとも Google Fonts からダウンロードできます。 ライセンスの原文はフォントに同梱されている OFL.txt です。 改変して再配布するときの条件はありますが、画像に使うだけなら費用も表記も要りません。
実測:同じ言葉で、インクの量を数えた
「太い」を言葉で言い合っても決まらないので、数えました。 同じ言葉「見た目が9割」を、同じ大きさ(200px)で3つの書体で描き、字面の箱の中で黒い画素が占める割合を出しています。

| 書体 | 字面の箱に占めるインク | Noto Sans JP Black を1としたとき |
|---|---|---|
| Dela Gothic One | 68.5% | 1.25 |
| M PLUS 1p Black | 56.5% | 1.16 |
| Noto Sans JP Black | 47.3% | 1.00 |
Dela Gothic One は字面の7割近くがインクです。 「太い書体」と一口に言っても、Black どうしで1.25倍の開きがありました。 ここまで太いと、一覧の大きさでも線が残ります。
太い書体の裏:小さくすると漢字から潰れる
太い書体は、線と線のあいだの白(懐)が最初から狭い書体です。 小さくすると、その白が先に埋まります。ひらがなは大丈夫でも、「顔」「置」のような画数の多い漢字が先に潰れます。
画数の多い2字「顔置」を、一覧での大きさが 11 / 14 / 20 / 31px になるように描き、字面の箱に残っている白の割合を数えました(小さいほど潰れています)。 一覧での大きさは、1280×720 でつくった字を幅360pxに縮めたときの値で、 1280×720 での 40 / 50 / 70 / 110px にあたります。
| 書体 | 11px | 14px | 20px | 31px |
|---|---|---|---|---|
| Dela Gothic One | 20% | 14% | 18% | 24% |
| M PLUS 1p Black | 30% | 35% | 33% | 29% |
| Noto Sans JP Black | 39% | 44% | 41% | 39% |

Dela Gothic One は、31pxで24%あった白が、14pxでは14%まで減りました。 M PLUS 1p Black はどの大きさでも3割前後で、あまり動きません。 「懐が保たれる」というのはこのことです。
サムネるでは、Webの画面でも12.5px以下には見出し書体を使わないという決まりにしています。 画数の多い漢字が塗り潰れて □ に見えるからです。 サムネイルでも同じで、一覧で14pxを割る段(1280×720で50px前後)には、太すぎる書体を当てないほうが読めます。
サムネるの生成は、いまのところ全段 Dela Gothic One です。 その代わり、いちばん小さい段でも基準の大きさを 1280×720 で 56px(一覧で 16px)にして、 境目を割らないようにレイアウトの側で決めています。 Web ページの見出しでは逆に、漢字の多い見出しだけを M PLUS 1p Black に分けました(2026年8月)。 「大きいところは太く、小さいところは懐のある書体に」という同じ考え方です。
縁取りは「字の8%」
写真やイラストの上に文字を置くと、背景の明るさが場所によって変わるので、 文字の色をどう選んでも、どこかで背景に溶けます。 そこで縁取り(アウトライン)を付けます。

縁取りの太さは、ピクセルではなく字の大きさに対する割合で決めます。 サムネるでは0.08em(字の高さの8%)にしています。 ピクセルで決めると、1280×720と3840×2160で見た目の比率が変わってしまうからです。
- 縁取りは、抜き文字(背景の上の白い字)にだけ付ける。色の付いた板の上に載せた字には付けません。 板が濃いので要らず、付けると字が潰れます。
- 太くしすぎない。8%を超えると懐が埋まり、上の「小さくすると潰れる」問題を自分で起こすことになります。
- 縁取りだけで足りないときは、縁取りを太くするのではなく、文字の下に半透明の板を敷くほうが読めます。 背景の明るさごとに何割敷けばいいかは「文字の下の板(座布団)はどれくらい濃くすればいいか」に書きました。
「太字」ボタンで太くしない
書体に太いウェイトが無いとき、編集ツールの「太字」ボタンや CSS の bold は、細い字を機械的に膨らませます(合成太字・擬似ボールドと呼ばれます)。 線が太くなるのではなく、字全体が外に滲むので、懐が埋まって輪郭が鈍ります。
これを2026年8月14日に、サムネるのサイトで踏みました。 見出しの書体を「400」で読み込んでいたのに、見出しの既定は「700」なので、 ブラウザが勝手に太らせていたのです。 描いて黒い画素を数えると、24,541 が 28,657 で +16.8%。 文字の送り幅は1pxも変わらないので、幅を測っても気づけませんでした。 「漢字が潰れて見える」と言われていた原因の一つがこれでした。
- 最初から太いウェイト(Black・Heavy・900)を持つ書体を選ぶ。上の3つはどれも、そのウェイトそのものが配布されています。
- ツールの「太字」は押さない。太さは書体の側で選び、字の形は書体に任せます。
では、どう選ぶか
- まず商用利用できる書体に絞る。「無料」と「商用可」は別の話です。SIL Open Font License なら心配ありません。
- 次に太さで絞る。細い書体は一覧で消えます。Black・Heavy のウェイトを持つものから選びます。
- いちばん大きい段は、いちばん太い書体でよい。そこは一覧でも30px前後あるので、潰れません。
- 小さい段(一覧で14pxを割る段)は、懐のある書体に落とす。太さは一段譲って、読めることを取ります。
- 文字数と太さは、両方で読める大きさを決めます。いちばん大きい段に何文字まで入るかは「サムネイルの文字数」の記事に、レイアウトごとの実測を載せています。